事件を少し振り返ってみる
事件の流れをちょっと見てみる
焼肉酒屋えびすの事件というモノは調理場における管理という点、そして社長が貪欲なまでにお金というモノに執着していかにして稼ぎ出すことができるのかということに集中した結果として起きた、そう見るべきなのです。そもそも焼肉屋ではキチンと客に提供する前にトリミングをしていない、肉の衛生検査をしていなかったというのです。さらには問題となったユッケを前日の残り物を廃棄せずに使いまわしていたというのです。何をしているんでしょう、そんなことをしていれば食中毒は防ぎようが無かったということではなく起こるべくして起こったというものになります。
この事件で被害者となった人数は全員で『181名』となっており、ここから内5名が死亡すると言う事態になりました。食中毒事件は頻発していると紹介しましたが、その多くは死者を生み出さないような軽度のもの、重症だが命の別状はないまでに留まっているために世間には感知されないものばかりとなっています。この焼肉酒屋えびすが大騒動を喚起することになったのは死んだ人間、しかも複数人というレベルで出てきたとなっては、国としてもマスコミとして黙っているわけには行きません。
結果として不祥事が起きた際にはフーズフォーラスは対応に追われることになります、しかしそんな対応の最中でも代表は自分を正当化することに徹していました。業界では生肉を販売する事は当たり前、むしろユッケという物を提供してはいけないという規定もないことの方が問題で、この問題はむしろ国に責任があるなどして、今回の事件に関しては自分には責任の有無は存在しない、事件と自分は無関係であるなど、まるで態度から被害者達に対して謝罪をする気ははなからないというところで、逆切れと揶揄されるような会見は終了することになりました。
そして現在でも言われているように相当なバッシングを受ける事になり、さらに焼肉酒屋えびすに対して営業停止処分となり、その後無期限で事件が起きた店は無期限営業停止という重い処分を下されることになりました。その後死者が5人に増え、営業を再開することが出来なくなりつつある店舗、営業しても風評から客足がめっぽう付かなくなるなどの影響もあって、フーズフォーラスは廃業に追い込まれることとなります。
日本一の会社を目指す、とスローガンにまで公言していた会社の幕切れは負債を背負って呆気ない幕切れとなりました。それでも社長を含めた同族役員全員はそのまま残った資産を予め回収されないようにと個人資産へと変換している事は確実でしょう。廃業しても社長一族はそこまで大きなダメージを背負うことはなく、むしろそこで働いていた人間たちがよほどその後の生活をどうして行くべきなのだろうかと路頭に迷ってしまうような事態になりかねる状況を生み出したことが深刻かもしれません。
死者の一人について
筆者はこの事件の特集をテレビで何度か見たことがありますが、ある時死亡してしまった14歳の少年の特集が組まれていました。この少年も家族と共にこの焼肉店に訪れて食事をしたということですが、問題となったユッケを食したのはこの少年だけではなく、父親も同様に食していたというのです。でも発症したのは彼だけで、しかも訪れた理由も彼自身の誕生日を家族で祝うというものだったのです。食べた後、病院に担ぎ込まれてその後半年間闘病生活を送ることになります。この時ちょうど中学三年生へと進級しましたが、わずか1ヶ月足らずしか第三学年としての時間しか過ごしていなかったのです。その後少年は半年間病院のベッドに縛り付けられたまま意識が戻ることもなく、そして二度と家族の声も顔も、友人達と共に過ごす時間に戻れるような機械もないまま、病状に蝕まれながら帰らぬ人となりました。
一度でも意識が戻って入ればと思うところです、そうすれば家族としても最後に一度だけで会話が出来てよかったと思えますが、そのまま意識不明となって家族の呼びかけにこたえることもないまま一人寂しく死んでいった、早すぎる死とそして誰の言葉も届かないまま深い眠りに付いた少年は死の淵で何を思っていたのでしょう。
親からすればどうして自分じゃないんだと思い、そして問題を引き起こして自分は悪くないと正当化する社長は憎しみの矛先を向ける対象となったでしょう。ただこの社長は性根から腐っているようで、一度きちんと謝罪に訪れたと報じられていますが、その後は事件のことなどなかったかのように生活をして顔を出すこともなくなったと父親は語っているというのです。テレビの向こう側でしか見たことがない人間の表情など信じるに値しない情報ですがどうやら今回に限っては、映っていた人間の本性というモノがこれでもかとにじみ出ていたということに繋がっていきます。
被害者への賠償は全く進んでいない
そして肝心の被害者に対する賠償についてですが、一円も支払っていないという状況にあるそうです。そしてこの社長は肉を卸した商店を逆に訴えてその賠償金でお金を補填すると話しているそうです。人殺しを下も同然の人間の言葉に耳を貸す人々は当然いないため、この社長は現在でも傍から見れば不毛な責任のなすり付けを法廷の場で繰り広げているのです。
醜いとはこのことかもしれません、最終的にはこの社長もお金だけを第一に考えて企業を経営していたときに理念としていた事は嘘だったことはもちろん、メディアの情報など騙すためにあるモノだというようなそんな負の面を表現することになります。
社会に与えた影響
この事件をきっかけに業界にはユッケを含めた、生食で食べられるという牛肉が出荷されてなどいないことも判明したことでその後まで食べられるとして提供されていたユッケ、牛レバーも焼肉店などで食することが全面的に出来なくなりました。今まで美味しく食べていた人達はきちんと管理の行き届いた安全な物を食べていたということが証明されたこと、そしてトリミング作業といった安全に重視した食材の取扱というものがどれほど大切なことなのかということを証明する事件となりました。筆者はそこまでユッケを食べていなかったため、なんとも思っていませんが業界としてもそして企業としても大きなダメージだったことには違いないのは確かなことでしょう。